地域で活躍する会社から学ぶ -好成績・好業績の秘訣- 第3回

一若建設株式会社(愛媛県)

一若建設株式会社(愛媛県)酒井課長

オペレータがどれだけ重機から
降りて確認するかが鍵

先ずは三分で丁張りをかけて後から八分で切り直す

一若建設へのインタビューもこれが最終回。

今回は、今年2月に保戸峰林道新設工事で林野庁長官賞を受賞した酒井課長に、好成績をとるための秘訣についてインタビューを行った。

切取法面の美観に配慮

─── これはすごい林道ですね。
     どのように施工されたのですか?

酒井課長

一番は見た目ですね。誰が見ても「いいぞ」と言う、見た目が非常に美しく仕上がっている現場です。土工事で法尻に擁壁が無い構造にも関わらず、切り取りの足元もきれいに出来ました。どうやってここまで仕上げるのかが大変です。ちなみに今回の工事成績は91点でした。

─── 延長はどのくらいありますか?

酒井課長

今回は540mですが、年度によって違います。この年だけではなく、毎年この程度の仕上がりで出来ています。たまたま今回はこの位で一応終わりと。

─── これは基本的には片押しですよね?木を切りながら道路を切っていくのですか?

酒井課長

切って出せる範囲の木を搬出して、切り株を抜いたところに丁張りをかけ、50m位ずつ進んでいきます。だからどうしても工期が長くなってしまいますし、岩だらけの山ですので大石がとれるとポコっと穴になって見た目が悪く、現場の印象も悪くなってしまうので、施工が難しいです。

─── 岩なので、ほぼ垂直に切るということでいいのでしょうか?

酒井課長

三分の勾配が入っています。基本的に岩が三分、土が八分と大体その規定です。施工前の段階ではどこから岩が出るかわからないので、先ずは全部三分で切って、岩が出る深さがここだというのが決まれば、それから八分、上に向けて逆に切ってという感じの施工になります。

これはうち独自のやり方ですね。どこに岩線の変化があっても後から対応できるようなやり方です。

─── 先に何mピッチというようにバックホーで掘削するのですか?

酒井課長

一部の横断ごとに掘るのではなく測点ごとに掘ります。林道なので離れていても10m、近ければ5・6mピッチで掘りながら確認します。何段もある場合は、切り直しがきく程度の法高であれば、ある程度想定してやります。

高い場合はある程度上部から想定してやらざるをえませんが、美観をよくするために切り直しを覚悟でやっています。

─── 他社では方法が違うのですか?

酒井課長

色々あると思いますよ。岩が出てきたら水平なステップを付けるとか。本来はここで変化するのを、奥に切りすぎたらステップを作って擦り付けるということですね。切りすぎたからしょうがないということで岩の上に平らな部分を作るという感じで対応するような施工の方法が多いと思います。美観も施工性も両方とるという方法ですね。

造林木の保護に工夫

─── 工事用地に隣接する造林木の保護についてはどんな対策をとりましたか?

酒井課長

現地にある枝を1m50程度に切って1本1本に巻きつけます。それと伐開して出た枝を横に並べて、石も下に並べます。適当に置いていると美観も悪いのできれいに並べました。その辺も最初の伐開の時から気を付けてやっていかないと後で手間になりますので、どれを巻いたらいいか、厚めの土木マットを巻こうかななどと常に色々と考えています。

─── これはかなり法の下の方ですよね。全て人力ですか?

酒井課長

全部人力です。体力がないと出来ないですし、要領よく順番を段取りしていないと余計な仕事が発生するようになり大変な手間と費用がかかります。岩でないところはやらなくてよいのですが、そういった所は殆どないです。

オペさんがどれだけ重機から降りて通りを確認するかが鍵

─── 勾配の管理が面白いと思ったのですが、他に何かありますか?

酒井課長

切り取りはオペさんの腕にもなってくるのですが、オペさんがどれだけ重機から降りて通りを確認するかが大事ですね。なかなか重機から降りないような人だとダメです。うちで丁張りの勾配を確認する独自の方法があるのですが、先ず法肩に丁張りをかけ、そこにピーピーロープの細いものを付けて、確認時にロープを伸ばして通りを確認してもらいます。法勾配が適切かどうかオペさん一人でも分かりますので、こういった現場ではこの方法を使っています。丁張り板が掘削面にあると施工の邪魔になりますが、この方法なら施工効率と正確性を両立できます。

実際には丁張り板の上部に釘で付けておいてロープを引っ張り、丁張り板と水平になるまで引っ張って、丁張りの厚みの分だけ下がった部分で法面を確認します。

その他では、特にカーブの周りで測点間が長い場合に、中間丁張りを入れてカーブを滑らかにまわすように心がけていますね。そのように施工していますので、足元も写真のように滑らかに仕上がっています。やはり手間暇かけないときれいに仕上がらないですね。

(取材・まとめ ワイズ)

一若建設株式会社

一若建設株式会社

(いちわかけんせつ)

愛媛県宇和島市に本社を置く総合建設会社。一般土木工事から港湾工事、トンネル工事まで直営施工を行う。

愛媛県宇和島市和霊町1250
代表者:中畑 健右