2017/02/14 国土交通省 「建設産業政策会議 地域建設業ワーキンググループ」が初会合。地域建設業が10年後も安定して役割を果たすことができるよう議論。

国土交通省は2月13日、「第1回 建設産業政策会議 地域建設業ワーキンググループ」を開催した。

「建設産業政策会議」は、昨年10月に立ち上げられ、劇的な進展を遂げるAI、IoTなどのイノベーション、労働力人口の減少といった事態を正面から受け止め、10年後においても建設産業が「生産性」を高めながら「現場力」を維持できるよう、法制度はじめ建設業関連制度全体の基本的な枠組みについて検討を行う。
「建設産業政策会議」では「法制度・許可ワーキンググループ」、「企業評価ワーキンググループ」、「地域建設業ワーキンググループ」の3つのWGを立ち上げ、今回は第1回の「地域建設業ワーキンググループ」が開催された。

「地域建設業ワーキンググループ」では以下が議論される。
・地域建設業に期待される役割
・地域建設業を取り巻く現状・課題
・地域の入札契約を取り巻く現状・課題
・地域建設業の方向性について
・都道府県のインフラ管理の現状、問題意識と今後の方向性(次回以降で議論)
・地域の建設企業の問題意識等(次回以降で議論)
・地域建設業が今後目指すべき姿(次回以降で議論)

冒頭、海堀建設流通政策審議官より、「地域を支える建設業が今後目指すべき方向性についてご議論をいただきたい。
地域建設業は地域でのインフラの守り手として非常に重要な役割をはたしている。しかし全体の事業量が増えない、特に新設が減っている。老朽化対策、維持管理などの新たな技術も大きくなっている。
維持管理については地域維持型維持管理、品確法では地域建設業が受注しやすい複数年契約や協同受注などを提案させていただいた。今後を考えたとき維持管理、災害対応の需要が拡大していく中で、新設等の需要の減少等トレンドになる。地域建設業が今後どうしていくか基本に立ち返ってご議論をいただきたい。」と挨拶があった。

海堀建設流通政策審議官

<地域建設業に期待される役割>

地域建設業は災害対応や増加する維持管理等を担う「地域の守り手」としての役割を果たしており、10年後においても安定的な役割の維持が求められる。

地域建設業の役割としては以下の役割等が挙げられる。
・地域を支えるインフラの安全・利便性の確保
・災害時の応急復旧、復旧・復興工事を適切に実施
・地域の雇用や地域経済にとって基幹的な役割
・技術力や保有機材を活用して、地方創生に貢献

<地域建設業を取り巻く現状・課題>

大都市圏・地方を比較すると、地方の建設企業が大幅に減少し、企業規模別だと規模の小さい建設業で利益率が低い状況だ。
今後、維持修繕工事は増加する傾向にあるが、建設業では担い手確保不足、後継者問題が課題となり、合併等に特例措置を講じる施策も進んでいる。

建設投資額は平成4年の80兆円をピークだったが、平成22年には約半分の40兆円、最近は持ち直してきていており、50兆円程度で推移している。
建設投資では、公共工事は「土木」、民間工事は「建築」が大部分を占めている。
地域別にみると、北海道・東北・中四国・九州等の地方部では都市部に比べ、公共工事の割合が高い傾向にある。

建設業の事業分野別指針
※上記資料は「第1回 建設産業政策会議 地域建設業ワーキンググループ」資料より引用

また維持管理・更新費は2013年度に約3.6兆円だったのが、10年後の2023年度は約4.3兆円~5.1兆円、20年後の2033年には約4.6~5.5兆円程度になると推定される。
維持修繕工事は増加傾向だが、特に建築工事のシェアが大きくなっている。

(平成26年度 維持修繕工事高(15.3兆円)の内訳)

地方圏では大都市圏に比べ、事業所数が著しく減少している。特に中規模(従業員10人以上)の建設企業の事業所数が大幅に減少している。
倒産件数は減少しているが、休廃業・解散が増加している。

建設業の事業分野別指針
※上記資料は「第1回 建設産業政策会議 地域建設業ワーキンググループ」資料より引用

経営状況で確認すると、小規模な建設企業ほど、営業利益が低迷している。
また男性生産労働者数を建設業と製造業で比較すると、製造業の平均461万円に対して、建設業は433万円となっている。これは大規模、中規模、小規模に分類した各階層では建設業のほうが高くなっているが、建設業は小規模企業が80%近く(製造業では33%)を占めることにより平均では製造業より低い賃金となっている。

建設企業の経営上の課題としては、人手や後継者問題など、新たな課題の比重が高まり、建設企業間の協力体制の構築や、技能労働者の確保・育成を図る動きが顕著となっている。
(建設企業の経営上のニーズの推移)

建設業の事業分野別指針
※上記資料は「第1回 建設産業政策会議 地域建設業ワーキンググループ」資料より引用

特に小規模企業においては後継者問題が経営上の課題として高まるとともに、事業規模の拡大を図るため、合併や事業譲渡等を検討する企業が存在する。
合併等を行った企業に対しては総合評価点への加点や地域要件の管理、入札参加等級の緩和等の特例措置を講じたり、許可・経審手続等での特例措置が検討されている。
・合併時の建設業許可や経審について、申請に係る事前確認手続きを整備し、手続きの迅速化を検討する必要
経審については、財務諸表の作成・合算に伴う負担の軽減等を図るため、書類の簡素化を検討する必要
・廃業時の技術者の円滑な移行を促すため、経審上の特例措置を講じることを検討する必要
・地方公共団体における入札制度上の特例について、効果検証もしつつ、今後のあり方を検討する必要

参加された委員からは、「地域建設業に焦点を充てていただいたことはありがたい、発注量の確保でなく、発注の仕方も経営計画が立つように工夫する」、「業者数が減っているが、必要なところに業者が存在しない」等の意見が出された。

<地域の入札契約を取り巻く現状・課題>

地域の建設業者の育成・経営の安定化を図る観点から、地域での工事実績や事業所の所在地を、指名基準や総合評価方式での評価項目としてきた。
また地域維持型契約方式では、地域維持型JV、事業協同組合の方式が実施されてきた。
地域維持型契約方式は導入22道府県の約半数以上が契約10億円未満かつ契約件数10件未満であり、地域維持型契約が十分に浸透していない。
期間についても道路等維持管理事業では2年以上が多いが、除雪事業では1年のものが多くを占めている。

参加された委員からは、「地域維持型JVは拡大していただきたい」、「除雪には人をすぐに出動できる体制づくりが重要、道路維持はパトロールと危険を察知したり、技術力がないと難しい」等の意見が出された。

<地域建設業の方向性について>

地域建設業の方向性については以下の観点が示された。

参加された委員からは、「維持管理が増えていくのは間違いない」、「国、県、市での発注側が防災協定で連携するようにする、成績評価・企業評価もお互いに活用する仕組みが必要ではないか」、「直雇率や自前の機械を持っているかを発注の際に評価することも検討」、「毎年一定額の公共工事が発注されるようになって建設業が発展してきた、業者を地域に根付かせるためには毎年一定の受注額を保証する必要があるのではないか」、「休日・給料をいかに確保するか。どのような仕組みが考えられるか」、「仕事量の保証が一番だが、企業独自の営業努力で将来の成長分野でどう見出していくかも課題。以前は新分野進出が叫ばれたが、失敗例が多く良いイメージがない、成功例も取り上げる。先行投資して借入金が増えると経審点数にも影響するのは見直すべきではないか」等の意見が出された。

「建設産業政策会議 地域建設業ワーキンググループ」は、今年6月をめどに取りまとめがされる。


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