2016/12/20 「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会(平成28年度 第2回)」を開催 ~工種・等級区分の見直し、監督・検査方法の見直し等について議論~

平成28年度 第2回の国土交通省「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」が、東京 霞が関の中央合同庁舎3号館にて開催された。
9月の第1回の会合に続く開催で、今回は、1.発注標準等のあり方、2.監督・検査のあり方、3.建設現場の休日拡大に向けて、4.事業管理業務について議論がなされた。

1.「発注標準等のあり方」 ~工種区分・等級区分・地域要件の見直しについて~
現在の直轄工事の競争参加資格においては、一般土木工事、アスファルト舗装工事、鋼橋上部工事等の21工種に分類され、工種によってA~Dランク等に区分した発注標準が適用されている。
発注標準は工種毎に経営事項審査点数に技術評価点数を加算した総合点数により等級区分が決まる。
等級区分にあわせて災害対応、除雪といった地域要件が設定され、希望により従前の等級に留まる「残留措置」が実施されている。

工種区分について、今後維持修繕工事が増加するなど事業特性が変化すること等から、品質確保上必要な技術力の確保、十分な競争環境の確保といった観点から工種区分を見直す必要はないのか、また等級区分においても、企業1社当たりの発注量、技術力、地域の中小企業への配慮、上位等級昇級へのインセンティブ等の観点から見直す必要がないのかについて議論がされた。

(現行の工種区分)


(現行の等級区分について)


地域要件の見直しについては、地域企業の受注機会を確保するために、地域要件の考え方も整理していく。

(現行の一般土木、アスファルト舗装、維持修繕の等級区分と等級別業者数)


「発注標準等のあり方」について、参加された有識者より以下意見が出された。
・等級区分、工種区分も緩和する方向で。現在の区分は依然の指名競争時代のもの、今は一般競争や総合評価、さらにコリンズにより実績も整備されている。激変緩和しながら変更していく。
・ランクが上がることでマイナスになることがあるので配慮が必要。ランクが上がると両方とれるとかメリットがある仕組みにする。
・宮城県の震災対応では全251の協会企業のうち、213社が災害対応に協力し、26,000人が導入された。ランク分けや発注ロットが小さくなっている。
・発注者側が何を求めているのか、品質か金額か地域か?発注する内容・目的をはっきりさせる。
・ランクが上がりたくない企業は、従前のランクに留まる残留措置は是非やってもらいたい。
・今後、維持修繕工事が増えてくる。維持修繕として一括りにしているが専門が違う、評価の仕方をどうしていくか。
・維持修繕で出すか、維持修繕以外の工種で発注するか。現在も土木として発注されている工事もあるが、今後大規模修繕工事も出てくるので論点の1つとして考えていく。
・維持修繕は工種が多い、分けるのは難しい。


2.「監督・検査のあり方」 ~ICT技術の活用・非破壊検査・抜き打ち確認の実施~
監督職員については、監督行為に加えて地元協議や設計変更等の業務が増加し、負荷が増加している。現在負荷軽減のために、監督支援業務を導入している。
近年の問題として、データ改ざん、不正な検査報告書作成、虚偽報告等が発生している。監督職員の負荷軽減とともに、信頼性の高いデータを取得のため、監督方法の見直し、監督業務の充実が課題となる。今回は監督方法の見直しについて論議され、監督業務の充実は次回の課題となる。

※今回は監督方法の見直しについて議論


監督方法の見直しでは、不正を抑制するために①ICT技術を導入、②非破壊試験の活用、③抜き打ち確認の実施を導入する。

①ICT技術の導入では、施工管理の効率化に関する技術開発が進んでおり、現場で活用できる技術が確立しつつある。効率化のみでなく測点情報の自動保存により不正の抑制が図られる。


平成29年度からの試行工事では、施工データの自動計測等のICT技術により、不正の抑制や効率化が可能か検証していく。


また平成29年度の試行工事では、映像記録の活用により施工状況の把握を行う。材料・構造物の寸法検尺状況や、施工状況をビデオカメラを使って映像に残し、段階確認頻度の軽減や不正抑制を図る。


②非破壊試験の活用では、コンクリート構造物の配筋状況を確認する技術が向上しており、詳細な確認が可能となっている。導入により効率化や工程短縮が図られる。
平成28年度中に非破壊検査技術の実証実験を行い、技術の精度を確認し、実験結果を基に、適用対象を精査し、平成29年度から試行工事を開始する。


③抜き打ち確認の実施では、不正が発生した工種を対象に施工工期を把握した上で、受注者に事前通告せず抜き打ちで施工状況を確認することで不正を抑制する。落橋防止装置の溶接状況、地盤改良工事の薬液注入について抜き打ち確認を実施する。


「監督・検査のあり方」について、参加された有識者より以下意見が出された。
・監督職員の補助員とは→設計コンサルタントが登録されている。
・抜き打ち検査をすると補助員が増えるのでは→増えた分はICT等によって効率化を図る。専門の方に確認してもらうことも検討課題。
・品質が求められる工事とそうでない工事で、確保すべき品質に応じて検査項目・内容も考える必要があるのではないか。
・ICTで設計との比較をすると、これまでは一部分だけの検査だったが、3次元や面で管理するようになると、少しでもおかしいことでも見つかってしまう。全部データとして出てくるが全部その値にならないといけないのか、外れたら壊すのか、考えていかないといけない。
・面的管理や3次元管理はこれまでの発想を変えることができる。
・検査の書類は施工者が作っていたがICTにより書類が少なくなる。
・段階確認は検査としてやったほうがいいのでは。


3.「建設現場の休日拡大に向けて」 ~週休2日制の導入について~
週休2日制の導入について議論がされた。
直轄工事において4週8休を実施している現場は全体の1割未満となっている。
業界団体からは週休2日は入職対策としても必要との意見が出されているが、週休2日制の取り組みを実施した受注者からは工期が厳しい、リース機械等の経費がかさむ、日給作業員が収入減となるため安定的な収入確保が必要等の課題がある。また総合評価方式や工事成績への反映や、週休2日を促進するために処遇の改善や積算のあり方も検討が必要となる。

※現状では4週8休の実施は少ない。


※総合評価や工事成績へどう反映するか。インセンティブの導入が課題となる。


「建設現場の休日拡大に向けて」について、参加された有識者より以下意見が出された。
・発注者は適正な工期を設定する。
・総合評価でどう評価するのか?
・ワークライフバランスとして評価するのか?品質を上げるためにするのか?
・週休2日は良いが、雨の日は働けないので週日以上休むと収入が減る。
・インセンティブとして総合評価に入れるのでなく、経審とか別の評価をした方がいいのでは。なんでも総合評価でやるのはどうか。
・週休2日のモデルケース。モデルケースとして見せるためには完全週休2日にしたほうがいい。
・工期が遅れ気味になった場合どうするのか。リース代が増えるとか面倒見てもらえるか。
・技能労働者の日給は非常に厳しい。休んでも月給としては変わらない仕組み。
・週休2日は進めてほしい。若い人は土日休みを希望する。
・積算のあり方を改善する。


4.「事業管理業務」 ~事業促進PPP/CMの適用~
直轄工事における事業促進PPP/CMの適用について議論がなされた。
事業促進PPPは大規模、技術的に難易度が高い場合、早期着工・早期完成が求められる場合、地理的条件により通常の体制の確保が困難な場合に活用することを方針とする。
方針の実行のために、より実態に即した契約関係図書の整備、実態を踏まえた積算基準の検討、支払方法の検討等により実施環境の改善を進めていく。


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