2016/09/27 「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会(平成28年度 第1回)」
監督・検査のあり方・発注者間の連携強化について議論

平成28年度第1回発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する
懇談会が開催された。


冒頭の挨拶では国土交通省を代表して国土交通省大臣官房技術審議官 五道仁実氏より、
「地域の建設業界の疲弊や高齢化・若年入職者の減少等の問題を踏まえ、発注者の視点から
今後の方針について議論をいただくために、平成25年11月から本懇談会が設置された。
本年度も引き続き今後の建設生産・管理システムにおける課題について検討したい」と、話があった。
続いて東京大学大学院工学系研究科教授 小澤一雅氏が委員を代表して挨拶し、
「メンテナンスの問題・担い手確保・生産性向上といったニーズに応えるために多方面から
議論を深めてきた。 昨年度末の課題から引き続き、活発な議論がなされるようお願いしたい」
と述べた。
本懇談会では、前回までの議論のまとめを確認するとともに、以下のテーマについて議論が行われた。

1 建設生産・管理システムのあり方に関する検討の方向性
2 平成28年度に検討すべき課題について
   ・監督・検査のあり方
   ・発注者間の連携強化

■1 建設生産・管理システムのあり方に関する検討の方向性



昨年度の懇談会で議論された検討の方向性について、整理した内容が報告された。
課題は以下の4つに分類された。
Ⅰ.事業特性等に応じた入札契約方式
Ⅱ.中長期的な工事品質の確保
Ⅲ.インフラメンテナンス体制の確保
Ⅳ.受発注者の業務効率化・高度化
当面の主要課題として『多様な入札契約制度に対応した契約内容の整理』・
『適正な価格の設定と支払いの確保』・『地域維持体制の確保』・
『地区単位での発注見通しの統合・公表及び施工時期の平準化の検討』等の課題(表の赤文字の箇所)
が挙げられた。
『災害等の非常時における発注方式の適切な適用のあり方の整理』、
『「技術提案・交渉方式」の手続きの指針を整備・改善』等の課題(表の青枠の箇所)は
総合評価懇談会にて検討・改善を進めていく。

■2 平成28年度に検討すべき課題について

<監督・検査のあり方について>

近年の公共工事に関わる施工不良・不正事案の発生を踏まえ、監督・検査内容の充実、体制の確保が
課題として挙げられている。

検討の方向性として、以下の4点が示された。

1 施工状況の確認作業の効率化が図られるICT(loT)技術の導入
   ビデオ撮影による施工状況を記録・保存、自動計測管理や施工データのクラウド管理により、
   施工状況の確認作業の効率化・不正行為の抑制を図る。
2 不可視部分の確認が可能な非破壊試験の活用
   電磁波レーダー法等の非破壊試験を活用し、配筋状況の確認を行うとともに、段階確認の頻度の
   軽減を図る。
3 確認項目や頻度の増加と同等の効果が期待できる抜き打ち確認の実施
   受注者へ事前通告を行わず、抜き打ちで施工状況の確認を実施する。
4 より確実に品質確保を図るための品質確認体制のあり方
   施工不良・不正事案対応のための確認のあり方について、発注者による確認頻度の増加・
   第三者による確認・ISO9001に基づく品質マネジメントを活用した確認の体制を検討する。



これに対して、委員からは以下の意見が出された。

「ICTのデータは後でいつでも見られるようにすることが大切である。後で問題になった際、
遡ることができるよう残すべきである」
「発注者と検査する第3者が契約するタイプについて、検討する余地があるのではないか。
お金を出す側と契約者が一緒だと、今までのような事故が起こってしまう」
「実際に起こる不正は発注者が注意しても見抜けるものではない。
ICTを活用して品質自体を底上げするのも良いが、ペナルティをはっきりと示すべきではないか」
「不可視部分についての非破壊試験は深掘りする余地があり、工種を限定する必要はない。
他の部分にも活かすことが可能ではないか」
「抜き打ち検査を行うタイミングをどう表現するべきか。抜き打ち検査をすることを事前に覚られては
意味がない」
「発注者の確認頻度を増やすことは、現実的には難しい。外部に確認を依頼するのであれば、
信頼できる第3者でなければならない」

<発注者間の連携強化>

現在、担い手3法の改正、運用指針の策定を踏まえ、適切な発注関係事務の実現に向け、
地域発注者協議会等をはじめ各主体が重層的に取組みを実施している。
”歩切りの根絶”に向けた取組など、一定の成果が見られるものがある一方、適切な設計変更など、
依然対応が十分でないと指摘されているものも存在する。
昨年からの議論により、適切な発注関係事務に向けた連携・支援のための方策は
以下の通りに進めていくことが話し合われた。
1 ベストプラクティス等の共有 ~関心の高い発注者の更なるレベルアップ~
2 発注者(地方公共団体等)が目安とできる指標の設定 ~全ての発注者のボトムアップ~

受発注者双方のニーズを踏まえ、重点的に連携・支援に取り組むべき事項として
以下の3項目が設定されている。
・ 積算能力の確保・向上(適正な予定価格の設定)
・ 適切な設計変更
・ 施工時期等の平準化

1 ベストプラクティス等の共有 ~関心の高い発注者の更なるレベルアップ~



ベストプラクティスの例として、北海道津別町独自のチェックリストにより、積算内容や施工期間等が
適正なものであるか確認された事例、近畿ブロック発注者協議会によるアンケート調査により、
基準類の適用状況について、実態やニーズが把握された事例等が紹介された。

2 発注者(地方公共団体等)が目安とできる指標の設定 ~全ての発注者のボトムアップ~



各発注者の状況を発注者自らが確認できるよう全国統一指標の検討が行われ、
今後指標の決定を進めていく予定である。
重点3項目の指標案として、最新の積算基準の適用状況等、単価の更新頻度、
設計変更ガイドラインの策定・活用状況、設計変更の実施工事率、平準化率についての内容が
議論されている。

また、「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」の議論の進捗状況について報告された。



『歩切りの断絶』について、平成27年1月には歩切りを行っている団体が459団体あったが、
平成28年4月には0団体となった。
今後は適切な積算能力の確保・向上(適正な予定価格の設定)として進める。
『低入札価格調査基準又は最低制限価格の設定・活用の徹底等』について、低入札価格調査制度又は
最低制限価格制度のどちらかが未導入の団体が平成18年時点では484団体であったものが、
平成27年時点で181団体に減少している。
『適切な設計変更』について、都道府県政令市における設計変更ガイドラインの策定状況は、
品確法改正を踏まえ見直し済みである割合、今後策定予定の割合を合わせると97%であり、
ガイドラインは設計変更に対応している状況である。



一般競争入札等の導入状況については、地方公共団体では、一般競争入札に比べ、
総合評価方式を導入している団体は少なく、市区町村では一般競争は36%であり、
そのうち2%が総合評価方式となっている。
こうした中で施工状況の平準化に取り組まなければならないのが、現在の状況である。

これに対して、委員からは以下の意見が出された。
「発注者との連携について、取り組みはブロック単位で行われているが、ブロックをまたぐ形で
進めていくことができれば良いのではないか」
「良い事例を共有するだけでなく、”ワーストプラクティス”といった悪い事例の共有もあると
良いのではないか」
「くじ引き入札が多発している自治体もある。総合評価方式を行うには人員が足りないという
問題がある。都道府県や指定都市などではデータで見ると総合評価方式の割合は低くなっている。
費用もかかることだが、行政内部で対応できない部分を充実させなければ総合評価方式の割合は
増えない」
「設計変更のガイドラインについて、実際のところ周知は何処まで出来ているのか疑問である。
県のセンター等を使える仕組みがあると良いのではないか」



     

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