2016/03/02 「総合評価方式の活用・改善等懇談会」
重層構造や地方建設業のミニゼネコン化改善を促す方式など議論

総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会が3月1日、
およそ1年ぶりに30名以上の国土交通省及び業界・有識者委員等の出席の下で開催された。


はじめに国土交通省を代表して、大臣官房技術審議官の池田豊人氏が挨拶に立ち、
「歩切り問題は残り3自治体の根絶宣言を促しているところ。平準化発注については過去から続く
3月末工期に拘らず5月・6月等、適正な工期設定を徹底する。総合評価方式については、
民間技術を上手く活用することなどを目的として10年が経過し、近年では二極化を進めてきたが、
提案に対する評価に差がつかなくなってきた。20~30社の競争の中で提案する費用は、
1件あたり200~300万円かかっていると言われているので、1工事あたり1億円弱の費用を
かけていることになる。このことが果たして適切なのかどうか等議論をお願いしたい。」と述べた。  


国土交通省 大臣官房技術審議官
池田豊人氏

続いて座長を務める小澤一雅氏(東京大学大学院工学系研究科教授)より、
「総合評価方式の入札制度を始めて15年以上、全てで使おうと言い始めて10年以上が経過した。
5年以上同じ仕組みでやっている国はなく、どの国も改善を続けている。制度の改善に
ご協力いただきたい。」と挨拶があった。

委員会は4つの議事について、事務局からの説明と委員による議論の形式で進められた。

(1)「今後の総合評価落札方式のあり方」
事務局からは以下の通り説明があった。
平成12年度に総合評価方式が導入された。平成17年度に品確法が成立して一般化され、
ほぼ全ての工事に適用された。平成22年度に施工体制確認型が導入され、平成25年度から二極化
(技術提案評価型、施工能力評価型)を進めてきた。
技術提案の得点差の状況を見ると、堤防・護岸や鋼橋上部等の工事では上位3位までと4位以下で
25%以上の得点差がついているが、トンネルや橋梁下部工等ではわずか10%しかついていない。

以上の説明に対して、委員や国土交通省から活発な意見交換があり、福田昌史委員(高知工科大学
客員教授)から、「基礎的自治体工事のCORINS登録時に、複数の主任技術者の氏名登録を
承諾してしまい、JACICもルール通りの申請として登録が行われている」等の問題提起もあった。

(2)「受発注者の業務負担の軽減について」
段階的選抜方式では、1次審査順位が5位以内の企業が落札する割合は74.1%である。
PCや橋梁下部工等では落札者の1次審査順位が全て5位以内であった。

(3)「総合評価落札方式の評価項目について」
若手技術者の配置を促す入札方式を試行している。
試行工事の入札参加者数は7.3社と通常とほぼ同じ結果。
女性技術者の配置を求める工事では、平均の入札参加社数が3社(一般土木工事では平均7.4社)であり
競争性の確保に苦労している。1社応札の案件も16件中3件あった。
手持ち工事量と品質の関係では、急激な受注増加は、企業のバックアップ体制や技術者の体制等が
若干脆弱になる可能性が調査により示唆された。  


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委員からは次のような意見が出され活発な議論が行われた。

○小林康昭委員(足利工業大学総合研究センター 研究員)
「重層構造を評価対象にして欲しい。末端の下請けの作業によって品質が決定するので
評価必須項目(下表の○)としてほしい」

○伊藤淳委員(全国建設業協会 代表理事・専務理事)
「災害協定をもっと評価してほしい。建設業協会員会社の平均社員数は35名程度であり、
40歳以下の若手評価入札は緩和してほしい、あまり採用してほしくない。女性技術者も同様。」


○吉野清文委員(国際建設技術協会 理事長)
「何でも総合評価に入れすぎではないか。品質以外の評価を後から入れすぎではないか。」  


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○福田昌史委員(高知工科大学 客員教授)
「2点、申し上げたい。1つ目は、地方建設業者の空洞化をどうするつもりか。施工管理だけできて
施工ができないミニゼネコン化が進んでいるが、これで地域を守れるのか。施工能力を持っている業者の
評価ができる発注方法を考えてほしい。東日本大震災の際には、東北地整のD・Eクラス業者が
頑張ったから見事に震災後の復旧工事をやってのけた。これを発注者がどう評価するか。
2つ目は、施工力と品質の関係。強い会社がどんどん工事をとっている。しかし地域の防災を考えると、
複数の業者が必要。強い会社がどんどんとるのが経済論理だから仕方が無いことではあるが。」

○岩本直登委員(相模原市都市建設局土木部 下水道施設課長)
「相模原市では手持ち機械を評価項目にあげている。2年前の大雪で経験したが、災害協定を
結んでいても除雪できない業者が多かった。施工力と品質の懸念の話しがあったが、小規模なら
何本でも大丈夫だと思っている。」

(4)「直轄工事における総合評価落札方式の実施状況(平成26年度)」  


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施工能力評価型は、得点率約90%付近を中心に正規分布に類似した分布形状を示している。

全体に対する意見として、
「協力会社を含めて現在の状況で本当に若年者が入ってくるのか、業界として存続できるのか。」
「専門工事業者や民間建築工事の指導育成には営繕工事を活用したらどうか」の意見もあった。

※上記資料は国総建HP(http://www.nilim.go.jp/lab/peg/sougou_hinkakukon.html)の
   同懇談会資料を引用した。  

 

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