2015/12/15 i-Construction委員会が初会合。石井大臣「魅力ある建設現場を目指すためにi-Constructionを進める」と挨拶

12月15日、国土交通省は新たにi-Construction委員会を設置し初会合を開いた。


会議の冒頭、石井国土交通大臣より、
「今後、我が国において生産年齢人口が減少することが予想されている中、
建設分野において、生産性向上は避けられない課題である。国土交通省においては、
建設現場における生産性を向上させ、魅力ある現場を目指す新しい取り組みである、
i-Constructionを進めることとした。i-Constructionによって、建設現場における
一人一人の生産性を向上させ、企業の経営環境を改善し、建設現場に携わる人の
賃金水準の向上を図るとともに、安全性の確保を推進していきたいと考えている。
このため、i-Constructionを進めるための基本方針や推進方策等を検討するため、
i-Construction委員会を設置する」
との挨拶があった。


石井啓一 国土交通大臣

議事は、委員長である小宮山宏 三菱総合研究所理事長により進められた。


(委員長)小宮山宏 三菱総合研究所理事長

1.建設現場の生産性に関する現状
バブル崩壊後の投資減少局面で労働力過剰となり省力化が見送られた。
その結果、トンネルなどは50年間で生産性を最大50倍向上させたが、全体の4割を占める
土工やコンクリート工は横ばいである。更に建設現場の労働災害は全産業比で2倍
発生しており、建機との接触事故は墜落に次いで多い。また、技能労働者340万人のうち、
今後10年間で110万人の高齢者が離職の可能性。

2.i-Construction ~建設現場の生産性向上の取り組みについて~
技術面の改善としては、「ICT技術の全面的な活用」、「規格の標準化」がある。
制度面の改善としては、「施工時期の平準化」が考えられる。

(1)ICT技術の全面的な活用(土工)
これまでは設計図に合わせて丁張りを設置、その丁張りに合わせて施工し、丁張り検測と
施工を繰り返してきた。
情報化施工の部分的試行段階では、2次元の設計データから3次元データを作成して
情報化施工を行い、その後、検査書類用の2次元データに戻して検査を受けてきた。
i-Constructionでは、ドローン等で面的な3次元測量を行い、3次元測量データと
設計図面との差分から施工量を自動算出できる。3次元設計データ等により、
ICT建設機械を自動制御し建設現場のIoTを実施する。ドローン等による3次元測量を
活用した検査等により、出来形書類が不要となり検査項目が半減する。
現在は未整備のICT土工に対応した18本ある基準類の整備を平成27年度中に行い、
平成28年度からはICTの導入が遅れている企業の初期導入(関連機器、技術者育成など)
に係る支援を開始する。


<<クリックで拡大>>
国土交通省 i-Construction委員会 平成27年12月15日開催 配付資料より

(2)規格の標準化(コンクリート工)
現状の主な課題としては、土木工事は現場毎の一品設計・生産のため、材料が
最も少なくなる設計(個別最適)思想である。
しかし、現場毎に鉄筋や型枠の寸法が変わり、手間が増え非効率になるという課題がある。
鉄筋のプレハブ化等は、省力化や工期短縮が期待できるが、コスト高や運搬の制約から、
部材の分割化が必要。
今後は個別最適の考え方から、設計から施工、維持管理に至るプロセス全体の
最適化が図られるよう、各段階において規格の標準化を検討する。
取り組み方針(案)として、平成28~29年度に各工法を採用するために規格の標準化を
念頭においた、プレハブ化、鉄筋配筋等のガイドラインを作成する。

(3)施工時期の平準化
国債や繰り越しを活用して、今まで単年度で実施していた工事の一部を、年度をまたいで
2カ年で実施する。平準化により、労働者の年間を通じての収入が安定し、
休暇が取得しやすくなるだけでなく、ピークに合わせた機械保有が不要となり、
企業の経営環境が改善される効果が期待される。


(右から) 小澤委員 、 小宮山座長 、 建山委員

委員からは次の様な意見が出た。
○小澤一雅氏(東京大学大学院 工学系研究科教授)
この会議はInnovativeなConstructionを提言する委員会だと理解している。
今迄より早い工期でより良い品質の現場を実現していく。
今迄細切れだった施工の過程をつなぎ合わせ、調査・設計の段階から
施工を考える様にしたい。
プロセスの統合を行う際に、現場の技術者や技能者に何をやってもらうかというと、
人間しかできないアイディアや知恵を生み出す部分に力を使ってもらうことで、
より上手く進められるようにしたい。

○建山和由氏(立命館大学 理工学部教授)
部分的に人のやってきたことをICTに置き換えたとしても効率化できない。
人が有利なことは人が行い、機械が有利なところは機械で行うなど、
両者を融合させることが重要。しかし、ローカルの建設会社では導入が難しい。
ローカル企業は現状からなかなか抜け出せないが、地方をどうするかが大きなポイント。

○冨山和彦氏(経営共創基盤 代表取締役CEO)
建設業界におけるバリューチェーンの構造が変わる可能性があり、大きな変化である。
労働人口の減少は構造的であり今後も続く。
大きなチャンスでありICTをいかに使うかが重要。今後、新しいイノベーションが
どんどん出てくると思う。

○藤澤久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク代表)
デジタル化を進める中で、現在はどの程度の申請や検査がデジタル化され、
どの程度がOKとされているのか?
中々進んでいないのか、今どの段階にあるのか、対応できる業者や自治体はあるのか?
コマツの取り組みは建設機械メーカーではなくインテリジェンス会社としての取り組みだ。
建設のビジネスモデルを変える可能性がある。
この場では既存の建設系企業だけではなく、ICT企業を含めて議論したい。
東南アジアのコングロマリットからは、日本の高専を輸出して欲しいと言われている。
技術者が欲しいということだ。

(小宮山委員長より)
デジタル化はどの程度進んでいるのか?
(国交省より)
電子納品は義務づけられているが、実態としては電子データと紙の両方での検査が実態。
(小宮山委員長より)
今はデジタルだけではダメということなんですね。
(国交省より)
そうです。
(小宮山委員長より)
オープンかつ異業種を加えていかないと、規格が決まった途端に陳腐化する。
国がどこまで何をするのかが大きな事だと思う。
規格は不可欠だが、コマツのような企業に勝手にやらせておけば良いのではないか。
(富山委員より)
決めつけて国が先を予測して形を作ると、出来たときに遅れてしまうことがよくある。
(小澤委員より)
インフラを整備する中で国の役割はたくさんある。インフラの最大の購入者は国である。
将来に向けてモデルとなる仕組みを政策的に考えていただきたい。
(建山委員より)
北欧は広いこともあって進んでいる。情報化施工をやることによって利潤がまわってくる。
日本のローカル企業は「今やっても利益につながらない」と思っている。
(小宮山委員長より)
コマツの林業用建機はヨーロッパで日本の20倍の効率で木を切っている。


最後に国土交通省の徳山事務次官より
「今回の取り組みを最も重要な課題として考えて進めていきたい」と挨拶があり
閉会となった。

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