2013/04/11 設計労務単価大幅アップに対し「元請従業員」のベースアップ分は3%程度に

 ワイズは、労務単価改正により直接工事費が上昇した結果、 元請企業の現場管理費・一般管理費等(経営者・従業員給与等を含む)の改善にどの程度寄与するか試算を行った。
 手法として、国土交通・農林水産両省が3月29日に公表した平成25年度の公共工事の積算に使う 「設計労務単価」を、平成24年度単価で積算したデータに代入し得られたデータをもとに分析を行った。

工事費平均上昇率

 試算した100件程度における工事価格の上昇結果は平均で2.96%となった。
 工種別にみると、河川工事が3.34%、砂防・地すべり等工事が2.25%、道路維持工事が6.01%、 道路改良工事が2.63%、舗装工事が1.64%等と、手作業が多めの工種では高めに、 機械作業が多めの工種では低めの改善であることがわかる。
 また、市場単価で積算されている工種については、今回の労務単価の改正が直接反映されないため、 一部の職種については、労働条件の改善につながりにくいことも懸念される。

工事費構成

 分析結果より、直接工事費等への率計上で経費率が算出されることから、 現場従業員給与を含む現場管理費と、本社向けの一般管理費等の改善は、 工事費とほぼ同じ3%程度の改善にとどまったとも言え、 単純平均で15.1%増と大幅に改善された労務単価と比べた場合、 元請職員の設計上の「ベースアップ」はかなり低めに抑えられたということになる。

 総務省労働力調査によると、ピーク時に比べ23%減少した技能労働者数に対して、 建設業の管理職・事務職員数は27%減少し、設計や現場の施工管理業務を担う技術者数は17%減少しており、 技能労働者への配慮だけで十分と言えないのは明らかである。
 その様な中で建設関連業のデータではあるが、平成25年度の設計業務委託等技術者単価も平均で0.37%の上昇と小幅に収まっており、 広い意味での技術者に対する改善が進んでいるとは言い難い。
 更に4月1日から施行された改正高年齢者雇用安定法等の影響も加味すると、総合的にみて今回の改正で元請企業の経営負担が改善されたとは言えない。

 今回の労務単価改正は過去の実勢価格の調査方式をあらため、 今後の労働環境の改善を踏まえた画期的なものと言えるが、今後、 技術者給与の改善につながる管理比率の改善にまで踏み込むことで、労働者全般の不足状況が改善され、 建設業界の更なる発展に寄与するものと期待される。